21世紀の資本

  • 2020.01.13 Monday
  • 01:22

 

写真の説明はありません。

 

読書のメモはあまりとらないのですが、出版直後に読んで備忘録として書いていたのでこちらに転記。

今後も少しずつ読書メモを書いていきたいと思います。

 

非常に面白かったです。
圧倒的な歴史的資料の検討と、いくつかの数式で、資本主義社会が必然的に抱える問題を解明していきます。圧倒的な説得力。
また、19世紀の文学作品を引用することで具体的なイメージを持ちつつ読めるのがよかったです。

もし関心ある方いらしたら、以下やや長くなりますが、自分の読書メモもかねて、簡単に紹介します。

 

ピケティは冒頭、以下のようにいいます。
「格差や資本主義の糾弾それ自体を自己目的化する気はまったくないー特に社会的な格差は、正当なものなら、それ自体としては問題ではないのだから。つまりその格差が、1789年人権宣言1条に言うように『共同の利益に基づくもの』であれば構わない」(p34)

その上で以下の通り述べます。
「だが一方で、私は社会を組織する最高の方法や、公正な社会秩序実現のために最も適切な制度や政策をめぐる論争に、微力ながらも貢献したいと思っている。さらに私は、正義が有効かつ効率よく法治の下で実現されるのを見たい。その法治は万人に平等に適用され、民主的な論争に基づく普遍的に理解された規則から導かれるものであってほしい。」

この問題意識が通奏低音として、議論が始まって行きます。

 

この本で最も重要な不等式はr>g。
資本収益率は常に成長率よりも高い。

ピケティはこれは論理必然ではなく、歴史的事実として捉えられるとし、フランス、イギリス、アメリカ、日本の例を引きます。いろいろな要素があるにしろ、これまで歴史上この不等式が成り立たないことはないそうです。
なお、現在の日本では、資本の総額は国民所得の6年分だそうです。

この不等式が成立する場合、格差は拡大し、富が集中することとなります。
すでに過去において見られた現象で、現在も進行しています。格差は第一次大戦前夜のベルエポックの時代に頂点に達します。
唯一この不等式に変化が生じたのが二回の世界大戦の時です。


ピケティは以下のように述べます。

「20世紀に格差を大幅に縮小させたのは、戦争の混沌とそれに伴う経済的、政治的ショックだった。平等拡大にむけた、段階的同意に基づく紛争なき進展が見られたわけでない。20世紀を帳消しにし、白紙状態からの社会再始動を可能にしたのは、調和のとれた民主主義や経済的合理性ではなく、戦争だった」(p285)
「近代的成長、あるいは市場経済の本質に、何やら富の格差を将来的に確実に減らし、調和のとれた安定をもたらすような力があると考えるのは幻想だということだ」(p391)

 

しかし戦争後、格差はふたたび広がり続け、今は資本による収入とアメリカに見られる超高額所とにより特徴づけられます。そこには相続という重要な要素もあり、今や「世襲資本主義」の時代であるとされます。

そして、この不等式による事実は歴史的事実に鑑みて、以下のような問題を生み出すとされます。

「いかに当初の富の格差が正当なものだろうと、そうした財産はあらゆるまともな限界も、社会的効用で見たどんな合理的な正当化も超えて、自律的に増加し、存続してしまうのだ。」(p460)

 

それではどうするか。
そこでピケティが提唱するのが、世界的な累進的資産税です。現在のような所得税でないところが重要です。

以下のとおり説明されます。

「果てしない格差スパイラルを避け、蓄積の動学に対するコントロールを再確立するための理想的な方法は、資本に対する世界的な累進課税だ。こうした税金はまた、別の長所も持っている。富を民主的な検分にさらすというものだ。これは銀行システムや国際資本フローをうまく規制するための必要条件だ。資本課税は、私的利害よりも一般的な利害を優先させつつ、経済的な開放性と競争の力は維持する」(p489)

もちろんピケティはこのような課税が直ちに可能だとは思っていないものの、富の集中、また、途中議論で出てくる公的債務削減の極めて有効な方法として論じて行きます。

そして、r>gは、資本主義の中心的矛盾であると結論づけます。

 

以下のまとめが重要です。

「本研究の総合的な結論は、民間財産に基づく市場経済は、放置するなら、強力な収斂の力をもっているということだ。…格差拡大の強力な力もそこにはある。これは民主主義社会や、それが根ざす社会正義の価値観を脅かしかねない。」
「不等式r>gは、過去に蓄積された富が算出や賃金よりも急成長するということだ。この不等式は根本的な論理矛盾を示している。…いったん生まれた資本は、算出が増えるよりも急速に再生産する。過去が未来を食い尽くすのだ。」(p602-603)

再度すさまじいレベルの過去、そして現在の格差を引いた上で以下のとおり述べます。

「この格差拡大は、いまや長期的には持続不可能な率で高まっているし、これは自律的な市場の最も熱狂的な支持者ですら懸念すべき水準だ。さらに歴史的な実例を見ると、こうしたすさまじい格差は、起業精神などとはほとんど関係ないし、成長促進にもまったく役に立たない。またそれは、本書の冒頭で引用した1789年フランス人権宣言にある『共同の利益』などいっさいもたらさない」(p603)

この問題を乗り越えるために、資産税の導入に向けた、少なくともEUレベルにおける地域的政治的統合の重要さが再度強調されます。

富裕層が富むことで社会が潤うことはないーここではトリクルダウンという言葉は使わず、資本主義においてはいずれ格差は自然と減少すると論じたクヅネッツが検討した時期があまりに限定されていたと、歴史的事実を明らかにすることにより否定するという方法で。

日本はこの後どうなっていくのか。
知的好奇心の後の重い読後感です。

 

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