緊急事態下の女性とメディアーこれまでの実践

  • 2020.07.18 Saturday
  • 20:02

 

 

緊急事態下のメディアでの女性の起用の分析に続き、報告書は以下の通りの分析をしますが、それが可能になるためには、すでにメディアにおける男女の平等のために、様々な取り組みがありました。

 

【CSA(視聴覚高等評議会)の役割】

 

CSAはラジオとテレビに関する国の監督機関です。

 

2014年8月4日の「女性と男性の真の平等のための法律」で、重要な役割を委ねられました。

 

その役割とは以下のものです。

 

「視聴覚の方法による番組のサービス提供において、女性と男性が適切に起用されているのかを監督すること」

 

「番組における女性のイメージに注意をすること。とりわけ、ステレオタイプ、性差別的偏見、女性のイメージを毀損するようなイメージ、女性に対する暴力及びカップル内での暴力との闘いと戦うことにより、番組における女性のイメージを監督していくこと」

 

このため、CSAは毎年テレビとラジオにおける女性の起用に関する報告書を作成しています。この報告書はテレビとラジオの報告に基づくもので、CSAはその報告が正しいかどうかについて対象をランダムに選定して調査をしています。

 

報告の内容は以下のとおりです。

 

:ニュース、娯楽、スポーツ、ドキュメンタリー等の中のアナウンサー、ジャーナリスト、専門家、政治家、その他にかかる女性と男性の割合

 

:テレビとラジオは毎年以下の内容の番組の放送の義務を負う:

 − 性差別的偏見及び女性に対する暴力との闘いを内容とする番組

 − ステレオタイプのない番組

 

【INA(国立視聴覚研究所)の役割】 

 

INAは調査にAIを利用していることが特徴的です。

 

例えば、INAは2019年は、AIを使って、22のテレビ局、21のラジオ局の実に70万時間の番組の中での女性と男性の割合を調査しました。これだけの調査は世界でも類を見ません。

 

2010年から2018年までの調査では、ラジオでの女性の発言者の輪依頼は31.2%、テレビでは32.7%でした。

 

このような中、報告書は、数えることの重要性を強調します。

 

 ・量

  テレビやラジオに登場する立場ごとの女性の数、番組を作る女性の数

  新聞や雑誌に登場する女性の数、引用される女性の数

(記事のタイプ別、職業、太陽読者別等)、女性記者による記事の数、一面に使われている女性の写真の数等

 

 ・内容/質

  女性と男性にどのような役割が割り当てられているか

  被害者として紹介される女性と男性の比率

  家族役割とともに紹介される女性と男性の比率

  性的偏見や女性に対する暴力と戦う内容の番組の割合

  ジェンダーステレオタイプを含む番組の割合

  女性が中心的役割を担う番組や記事の割合

 

 ・地位

  管理職や意思決定機関の女性の数

  給与の平等

  女性と男性それぞれが安心して働ける環境の整備

  ワークライフバランスの促進

 

 

 

 

 

La liberté pour la France... Les libertés pour les Français (FD/120)

Bureau d'information Anglo-Américain , Editeur

En 1944

1ère moitié du 20e siècle

Musée de la Libération de Paris - musée du Général Leclerc - musée Jean Moulin

93.53

 

もともとこのような背景があった中で、先日の緊急事態下におけるメディアと女性というテーマの調査及び報告書が作成されることになりました。

 

その報告書の中では以下のような提言がなされています。

 

重要なのは今の現状を否定的にとらえることではなく、よい実践をよりよく生かしていくことにもあるため、すれになされている望ましい実践の紹介もあります。

すごいです。

 

 

【報告書の提言(抜粋)】

 

― ラジオとテレビ

 

・CSAの年間報告書の内容をより豊かなものにしていくこと、とりわけINAの調査結果を重視する。

 

・CSAに対するメディアの報告の頻度を上げること、CSAによる監督の頻度と方法を強化すること

 

・ラジオとテレビに対して毎月その番組の量と質について数を数えることを奨励する

 

・数を数えるにあたりAIを含めたツールの活用促進

 

― 雑誌および新聞

 

ラジオとテレビと異なり、監督機関が存在しない。そのため自主的な取組が重要となる。

 

・すでに実施されている素晴らしい取組についての情報を収集し、女性と男性の平等のための取り組みを希望する会社に対してはそのための方法を提示する。

 

・メディアにおける女性と男性の平等についてのジャーナリストの意識を高めるためのコンピュータツールの活用の奨励

 

・「印刷メディアの発展のための戦略基金」による援助条件として女性と男性の平等の尊重を加える。(※2019年度は1740万ユーロ)

 

・印刷メディアに対する公的助成に両性の平等を条件とすること

 

― 女性の地位向上のためのサポート

 

・女性と男性の平等に関するコミットメントに関する憲章の策定

 

・女性と男性の平等に取り組む企業のためのラベル

 

・ニューヨークタイムズで実施されたようなジェンダーエディターの創設

 

・女性専門家リストの策定と共有

 

・すでに存在する専門家ガイドの強化と金銭的支援

 

― 研修・教育

 

・メディアにおける女性の地位向上のための研修を実施した企業に対して税制優遇の導入

 

・継続研修、学生の教育

 

・小学生や中学生に対するメディアの中の性差別的ステレオタイプとの闘いに関する教育をさらに重視し、強化すること

 

・文化省の競争入札において女性と男性の平等を重視すること

 

― 経験の共有

 

・外国メディアの先進的取組の紹介

 

・番組の内容における女性と男性の平等に関して模範的なメディアの表彰

 

 

 

【実際の取組み】

 

すでに実施されている取組でも注目すべきものがあります。

 

― レゼコー紙(フランスの日経新聞)

 ・ボーナス:女性と男性の平等の目標到達度合いに応じ25〜30%のボーナス支給

 

 ・労使間協定:2024年までにすべての分野において男女比を50%とする(記者、編集、経営、論説委員、外国特派員等)。実際にはすでに到達。

 

― ル・パリジャン紙:平等憲章の策定、到達目標の設定とその達成度合いの数値化

 

数を数える関係では、CSAと異なりアナログですが、以下のような取組がなされています。

 

― ウエスト・フランス紙:700ページ分の調査。女性の写真、女性ジャーナリストの数、インタビューをされた女性の数等。数を数えたことにより、平等への取組みが促進された

 

― レゼコー紙:インターネット版において毎日女性の写真についての調査を行う。

 

― ル・モンド紙:論壇の執筆者、インタビューをされた人の性別、一面に掲載された人の調査を3か月ごとに集計し調査

 

テレビ局も女性専門家の登用に取り組んでいます。

 

― TF1:女性専門家100人を招いて、コーチング、メディア研修、記者との交流の場を設定。これにより、記者も女性専門家と信頼関係を築くことを目的とする。この結果、TF1では、女性専門家の登場率が大幅に増加した。現在TF1の番組では、インタビュー対象者の40%が女性で、女性専門家は50%となっている。

 

 

***

 

このようにフランスではメディア各局の判断だけに委ねず政府も積極的にメディアにおける女性と男性の平等の問題について取り組んできています。

メディアが人々の意識に与える影響を考えると無視できない点だと思います。

 

日本では、女性と男性の不平等の話をすると、男性からも「女性にぜひ差別解消のために頑張ってほしい」というエールをもらいます。もちろん当事者が声を上げることが必要ですし、フランスも多くの女性たちの戦いの上に現在があります。

 

しかしながら、一定以上は公権力の介入が必要な分野だと感じます。とりわけメディアなどでジェンダーステレオタイプが再生産される世の中では、頑張っても頑張ってもまた同じ問題が立ち現れてくる徒労感に似たものがあります。

 

最近自由という感覚について考えていて、フランスに行くとなぜ女性も自由な感じがするのだろうと思っていました。

 

いろんな理由があると思うのですが、自由という感情の一つには、「存在が忘れられず考慮に入れられている感触、存在が認められるという意識、自分が自由になるための条件が整えられていくという安心感、感触」があるのではないかと思います。声を上げたときに受け止められるという安心感、あるいは声を上げる前に、専門知識も人でも資金もある機関がすでに問題に取り組んでいるという安心感から、自分の社会の中の居場所が確実なものとなり、その確実さが自由を享受する自分を支えるのではないと思ったりします。つまり、日本では時々感じざるを得ないような、何をやっても無駄だというあきらめの正反対の感情、可能性があると思えることが自分は自由だと感じる基礎になるのではないかと思うのです。

 

もちろんフランスにも問題はありますが、フランスがやはりすごいと思うのは、問題を上手に立てる、ということかと思います。

中学高校でも徹底的に仕込まれますが、課題があったときに、まずその中の問題を抽出するという訓練、そしてそれに対して回答を模索し、自分の観点を打ち立てるという教育は素晴らしいものだったと思います。

 

今回も、未曽有の状況を前に、メディアで女性の問題は生じていないか、という問題をいち早く取り上げたのは、そのような問題抽出のスキルが特段に高いということもあると思います。その提起された問題の次のステップである最終報告書が楽しみです。