緊急事態宣言終了のための法案審査

  • 2020.06.13 Saturday
  • 14:46

 

 

フランスは7月10日で公衆衛生に関する緊急事態宣言が終了します。

緊急事態宣言が延長されないことについては、大統領がすでに明確にしています。

 

日本では、緊急事態宣言終了後であり、何らの法的根拠がないにもかかわらず、「ステップ1」「ステップ2」等が設定されて、営業自粛等が事実上強制され、さらに論理的整合性も科学的根拠もあいまいなままに「東京アラート」が解除されるとともに、「ステップ3」に入ったようです。

 

緊急事態宣言が終了したからといって、世の中が元通りになるわけではないので、その後をどうするかということはやはり問題になります。

 

方法論として、緊急事態宣言の発令やその内容に加え、出口をどうするかという事例においても、法的根拠はともかく個々人の自己責任で進めるのか、あるいは立法を行い、権利救済の観点を明確化した上で行っていくのかという比較の例の一つになると思います。

 

以下で紹介するコンセイユデタの意見は、緊急事態宣言解除後の対応に関する立法をすること自体の必要性を認めつつも、具体的な措置についての必要性を具体的に判断し、不要と考えられるものについては、法案への記載に反対しています。

 

 

【緊急事態宣言終了後の対応に関する政府法律提案】

 

 

 

 

 

フランスで7月11日以降の対応を準備するための新しい法案が政府の方から準備されました。

 

これはあくまでも緊急事態宣言を延長するのでなく、事後対応を内容とするものです。

 

これは、緊急事態宣言終了後4か月の間、もしくは再度同じ問題が生じた場合(いわゆる「第二波」)の場合に、以下の権限を首相に与えるというものです。

 

なお、これらの権限はすでに2020年5月11日の法改正による改正後の公衆衛生法典L.3131−15条(公衆衛生に関する緊急事態宣言に関する条項)により首相に対し認められていた権限です(緊急事態宣言後に厚生大臣の命令により必要な隔離措置をとることができることは、すでに、公衆衛生法典L.3131−1条、L.3131−15条により可能となっています。)

 

  • 人や自動車の往来を制限し、あるいは禁止すること、公共交通機関の利用を制限し、あるいはその利用の条件を定めること

 

  • 多くの人が集まる場所や集会所などの一時的閉鎖、再開に関するコントロール、利用条件の設定(但し生活必需品や生活に必要なサービスへのアクセスは保障)

 

  • 公共の場所での集合や集会の制限や禁止

 

  • 厚生大臣が必要な措置をとること

 

  • 改正法を公衆衛生法典に挿入し、その適用は、2021年4月1日までとすること

 

 

【コンセイユデタの意見】

 

 

政府提出法案は事前にコンセイユデタの審査にかけられることから、2020年6月5日に政府からコンセイユデタに法案が提出され、6月9日にコンセイユデタから意見が出されました。

 

この意見の後、法案は修正をされ、6月10日に閣議決定の後、国会に提出され、現在審議がなされています。

 

 

 

政府提出法案に関する審議がなされるコンセイユデタの部屋

 

https://www.conseil-etat.fr/actualites/la-mediatheque/visite-du-conseil-d-etat-au-palais-royal/la-salle-de-l-assemblee-generale

 

 

コンセイユデタの意見は以下のとおりです。

 

  • 改正法を公衆衛生法典の中に挿入することは反対

 

確かに公衆衛生法典には、2020年3月23日の法律及び同年5月11日の法律により、公衆衛生に関する緊急事態宣言に関する条項が存在する。

 

しかしながら、今回の政府法律提出法案は、に関する特殊な緊急事態宣言の解除後の対応を対象とするものであり、一般的な規定とはなり得ないことから、法典自体に新しい条項を設けることについては反対である(つまり、新しい法律はそれだけ単独のものとして存在しなければならない。)

 

  • 緊急事態宣言の延長ではなく、解除後の対応に関する立法を行うことに賛成

 

状況が改善されている現在、解除後の対応に関する立法を行うことは、緊急事態宣言の延長を行うことよりも、均衡のとれた判断である。

 

他方、公衆衛生法典条は、緊急事態宣言解除後に一定の権限を厚生大臣に与えているが、これは政府が取る必要があるかも知れない措置の法的根拠とするには不十分である。

 

コンセイユデタは、政府提出法案が以下の点を予定していることを指摘しておく。

 

・その時点及び場所におけるリスクに比して、取られる措置が厳格に均衡を有しなければならないとされていること

・必要がなくなったら直ちに措置を終了させること

・個別にとられた措置についてはその地域を管轄する共和国検事正に報告されること

 

コンセイユデタはまた、取られた措置がリスクに対し、必要、適合的でありかつ均衡を有するものであることの統制を行政裁判所が判断するものであることを指摘する。

 

  • 第二波への適用について反対

 

コンセイユデタは、政府提出法案が予定する措置が、2020年11月11日から2021年4月1日までの間にさらに同様の問題が生じたときにも適用されるとしている点について、これを法案の中で維持しないよう提案する。

 

同じ問題の「発生」という文言も曖昧であり、もし、今回の緊急事態宣言を必要としたような事態の発生を予定しているのであれば、すでに公衆衛生法典L.3131−15条以下で定められている規定を活用することで十分である。そして、もしその条項が不十分であるのであれば、政府は緊急事態宣言を新たに発令し(一か月以上の延長には国会による法律が必要)、必要な措置をとることができる。

 

したがって、政府提出法案が予定する首相の特別な権限を2020年11月11日以降に同じ問題が生じたときに適用できるとする部分は不必要。

 

これを受けて、政府は条項を削除し、国会に法案を提出しました。