サッカーと行政最高裁

  • 2020.06.24 Wednesday
  • 18:25

 

 

行政裁判がどこまで及ぶかという意味で興味深い判決です。

コロナ禍の中のサッカーに関する2020年6月9日と11日のコンセイユデタ(行政最高裁)判決です。

 

【プロリーグ】

 

コロナウイルスの感染拡大で、フランスでは、3月12日に一部リーグのリーグ・アンが中断し、フランス・フットボール・リー(LFP)は、4月30日に、2019−2020年のシーズンを打ち切ることを決めました。その上で、その時点までの戦績に基づき、リーグ・アンの残留チームと二部リーグへの降格チーム、二部リーグからの昇格チームが決定されました。

 

これを受けて、リヨン、アミアン、トゥールーズのサッカーチームが、コンセイユデタ(行政最高裁)に対し、訴えを提起し、シーズン打ち切りの差し止めと降格の差し止めを求めたのがこの事件です。

 

結論としては以下のとおり、シーズン打ち切りは違法ではないが、リーグ降格について仮とは言え差止命令を出しました。

 

https://www.conseil-etat.fr/actualites/actualites/ligue-1-de-football-le-juge-des-referes-du-conseil-d-etat-valide-la-fin-de-la-saison-et-le-classement-mais-suspend-les-relegations

 

 

 

コンセイユデタのHPでの判例紹介で使われている写真がいつもおしゃれ。

 

 

 

そもそもなぜサッカーチームが行政裁判?というところですが、LFPは、私的な団体でそれ自体行政機関ではありません。

 

この点に関し、行政最高裁は、LFPは、独占的にフランス国内における試合を組織するミッションを託されているのであるから(スポーツ法典L.131−14条に基づく)、これは、立法者が行政的性格をもつ公的サービスの実施をLFPに託したものであると考えられるとしました。その上で、シーズンを打ち切るというLFPの理事会での決定は、行政命令的性格を有するとして、行政訴訟法典R311−1条に基づき、この決定の取消を求める訴えは、行政最高裁(コンセイユデタ)を一審かつ最終審として申し立てることができるとしました。

 

なので、LFPの決定は、行政裁判の対象となり、最高裁が審理するということで申立てが受理されました。

 

下のアマチュア選手権に関するフランスサッカー連盟の判断を対象とする裁判も同様の理由で、訴えをすること自体認められ血ます。

 

その上で、中身については、コンセイユデタは以下のとおり判断しました。

 

 

― シーズン打ち切りに対して

 

首相と厚生大臣が4月30日に、公衆衛生の観点から、団体競技を再開することはできないと判断したこと、また、この時点においてUEFAが各国サッカーリーグに対して、2019−2020のシーズンは2020年8月30日までに終わらせるように通告していたことを考慮すると、関係当事者の健康を守るとともに、2020−2021のシーズンを準備するための時間的余裕を持つためシーズンの打ち切りを決定したLFP理事会の決議には、違法性はない、と結論づけました。

 

― 降格について

 

LFPは、シーズン打ち切りに伴い、リーグ・アンの最下位であったアミアンとトゥールーズを降格としたことは違法であると判断しました。

 

その理由としては、リーグ・アンのチーム数を20とするというのは、フランスサッカー連盟とLFPとの間で締結された協定に基づくものであるが、その協定は6月30日をもって失効し、新たな協定が締結されなければならないことから、この失効が予定されている協定に基づいて、次のシーズンについてこの2チームを下部リーグにすることはできないと判断しました。

 

その上で、裁判所はLFPに対して、2020−2021のシーズンについて、リーグ・アンの構成をどのようにするのかということをフランスサッカー連盟との間で協議することを命じました。

 

 

【アマチュア選手権】

 

他方、アマチュア・サッカーの団体からも、フランスサッカー連盟がアマチュア選手権を打ち切ったことに関し申立てが行われ、コンセイユデタ(行政最高裁)は、6月11日に判決を出しています。

 

https://www.conseil-etat.fr/actualites/actualites/championnats-de-football-amateurs

 

 

 

 

 

最高裁は、選手権の打ち切りに関しては、定款にも規則にも規定のないことについては、フランスサッカー連盟は自ら判断をすることができ、コロナウイルス感染拡大の中、再開の見通しのたたない選手権を打ち切ったことは違法ではないと判断しました。

 

また、降格のルールについても、このような事態に対応する規定は事前にないことから、その対応はフランスサッカー連盟が取ることができること、フランスサッカー連盟に代わり裁判所が降格・昇格を決定することができないことから、降格の方法が顕著に違法でないかどうかを裁判所が確認するにとどまる、としました。

 

その上で、各地で争われるアマチュア・リーグや選手権の複雑さから、中断の時点の戦績を基に昇格・降格をフランスサッカー連盟が決定したことに顕著な違法はないとして、申立てを棄却しました。

リーグ・アンとの違いは、将来執行するルールに則ったか、ルールがない中で合理的と考えられる方法によったかどうかというのが違いでしょうか。

 

なお、申立人である地方リーグの団体は、フランスサッカー連盟の決定が「サッカーの優越する利益intérêt supérieur du football 」という言葉を使うのですが、具体的にはどのような意味か気になります。

裁判所は、フランスサッカー連盟の決定は「サッカーの優越する利益」に反しないとしていますが、意味を知りたいものです。

 

 

***

 

法や裁判所による問題の解決がサッカーのシーズンやチームの降格などにも及ぶというのは、日本ではあまり想像がつかず、法が社会のどこまで及ぶ必要があるのかということを考えさせられます。

 

そして、このようなケースを見ると、日本でももっと法が及ぶ分野があってもいいのではないかと思います。

(そういうと訴訟社会は…という意見もありますが、フランスでは訴訟は日本より多いですが、特段すごい訴訟社会ということではありません。)

 

ここで法が及ぶ分野というのは、ー詑遼 陛事者の持つ権利が多い)、⊆蠡核 淵侫薀鵐垢両豺腓任蝋く訴えを認める訴訟法の存在)、K_鮗瓠覆海虜枷修任蓮屮好檗璽弔諒薪」という言葉も出てきます。その他、原告適格を広く認めるという裁判所の姿勢)すべての及んできます。

日本はこの3つとも足りていないなあというのが実感です。

 

日本人は権利意識が低いというような言い方もしますが、´↓が足りていない状況では裁判をやるだけ無駄ですし、弁護士も裁判を進められません。

「日本人の法意識」などの議論もありますが、実体としては日本人の意識以前に、まずは法律の整備と法解釈にあたっての裁判官の意識を変えることから始めないといけないなあと思います。

もちろん、法律作るのも、裁判官も日本人ではありますが、ユーザー側の意識だけを問題にしても意味がないと思うのです。

 

サッカーに話を戻すと、去年は、元日本代表監督だったハリルホジッチ監督の代理人として民事訴訟を行いました。

これは、同監督の解任に伴って行われたJFA会長の記者会見が名誉毀損になるとして、しかし損害賠償としては1円を請求したというものでした。

行政裁判所と行政訴訟という観点からスポーツと裁判について改めて考えさせられます。。。